法人税法では、会社と役員との取引について様々な規制をしています。その中から、会社役員間における取引で特に同族会社と役員間の金銭の貸し借りと、不動産の貸し借りについて述べていきたいと思います。
同族会社とは、会社の株主等の3人以下及びこれらの同族関係者の有する株式数が、その会社の発行済株式の総数の50%超を所有し議決権の50%超を有している会社をいいます。
目 次
会社役員間の金銭の貸借
この取引は比較的多くの会社が行われていますね。以下 会社側と役員側とそれぞれで述べていきます。
■会社が役員から借入をしている場合
まずは会社が役員から借入をしている場合です。
①会社側
役員借入金として負債項目に表示されます。この借入に対して特に利息を支払わなければならないことはありません。
②役員側
会社への貸付となります。個人は必ずしも営利を目的としているわけではないので、この貸付に対して特に利息を受け取らなければならないことはありません。
もし利息を受け取った場合には必ず確定申告が必要です。所得税法では、1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の場合は確定申告を要しないとされているのですが、同族会社の役員等でその同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受取っている人は確定申告をしなければなりません。(たとえ毎月1万円年間12万円でも確定申告しなければなりません)
■会社が役員に貸付をしている場合
①会社側
貸付金として資産項目に表示されます。法人は営利を目的としてているので受取利息を計上しなければなりません。受取利息計上がなければ税務調査の指摘事項になるので要注意です!!!
②役員側
会社からの借入となります。この利息は支払わなければなりません。返済計画を立ててできるだけ早く借入を返済しましょう。
会社役員間の不動産の貸借
会社が役員から不動産を借りている場合や逆に会社が役員に不動産を貸している場合です。以下 会社側と役員側とそれぞれで述べていきます。
■会社が役員から不動産を借りている場合
①会社側
役員に支払った家賃は地代家賃として計上します。また損金(法人税法上も経費)にもなります。
この取引は上手に行えば、節税できる可能性もありますが、逸脱しないよう注意しましょう。
②役員側
会社から受取った家賃収入は必ず確定申告しなければなりません。これは役員が会社へ金銭の貸付を行った場合と同じです。
■会社が役員に不動産を貸している場合
会社の社宅等がこれにあたります。従業員に貸すのとは違って役員に対しては厳しく規定されています。
①会社側
役員から家賃相当額を受取る必要があります。受取らなければ役員の給与として課税されます。
賃貸住宅を会社の社宅として上手に行えば節税できる可能性もありますが、会社の資金繰りも考慮にいれ逸脱しないように注意しましょう。
②役員側
会社に家賃相当額を支払う必要があります。役員報酬から天引きするなどで対応しましょう。
最後に
同族会社と役員について特に多く行われている取引をできるだけ簡単に説明しました。一つ補足事項として、上記の取引は役員だけでなく従業員に対しても適用されます。理由は法人が営利を目的とするからです。
ただし、従業員に対しては上記の取引でも確定申告を要しない要件に当てはまれば、確定申告をしなくていいなど役員よりかなり緩くなっていますよ。
<会計事務所から一言コーナー>
日本は同族会社大国といわれるほど多く、その割合は実に全体の95%を超えています。
従来は、株式会社を設立するには発起人が7人以上必要だったのですが、改正により一人で会社の株主になることができ、また役員も一人で就任することができるようになりました。いわゆる「一人会社」ですね。(その代表取締役の親族も含みます)
これにより会社の方針や重要な取引なども、会社の代表取締役が一人で決定できることから、同族会社と役員の取引はいわゆる自己取引となり法人税法で厳しく規制されています。
本文中にも述べましたが、上手に行えば節税の可能性もあります。しかしながら「節税」できるということは「会社の資金流出」にも繋がるので会社の資金繰りも十分に考慮するようにしましょう。
なお、今回の本文とは関係ないのですが、余談で付け加えておきますと、役員が会社に貸し付けている金銭はいずれその役員の相続財産となります。慌てて対策する必要もないでしょうが、知識として知っておくのも役に立つと思いますよ。