資産を購入した場合にその購入年度に全額を費用計上できないものがあります。これらは購入後一定の期間に応じて費用計上をしていくことになります。この手続きを減価償却といいます。

固定資産の中には時の経過により価値が減少するもの(「減価償却資産」)とそうでないもの(「非減価償却資産」)があります。それぞれ見ていきましょう。

減価償却資産

減価償却資産とは業務に使用していて時の経過により価値が減少する固定資産をいいます。

例外はありますが原則的に使用可能期間が1年以上のもので取得価額(購入価額)が10万円以上(注)の次のような固定資産が対象となります。

①有形固定資産

建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品など有形なもの

②無形固定資産

鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、ソフトウェアなど無形なもの

③生物

牛馬、果樹など

(注)10万円以上の判断は消費税を含むのか含まないのか悩むところです。これは税法で定められていて消費税の経理方式について税込経理方式を採用している場合は税込で判断となり、税抜経理方式を採用している場合は税抜で判断となります。

非減価償却資産

非減価償却資産とは時の経過により価値が減少しない固定資産をいいます。具体的には土地(借地権など土地の上に存する権利を含みます)、美術品、書画、骨董品などが対象となります。これらの資産は減価償却をすることはできません。

減価償却資産の取得価額

減価償却資産の取得価額は購入価額だけでなくその引取運賃や設置費用、運送保険料、購入手数料、関税などが含まれます。

但し、例外として次のような費用は取得価額に含めないことができます。

①不動産取得税、自動車取得税、新増設に係る事業所税

②登録免許税その他登記又は登録のために要する費用

③建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用

④いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金

⑤その他一定のもの

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は大きく分けて「定額法」と「定率法」の2週類があります。

①定額法

毎年定額を減価償却費として計上する方法です。

<算式>「取得価額×定額法の償却率」

<具体例>
3月決算法人で1月に1,000,000円で資産を購入 定額法5年償却率0.2
1年目・・・・・1,000,000円×0.2×3/12=50,000円
2年目以降・・・1,000,000円×0.2×12/12=200,000円

減価償却費の計算はその減価償却資産を使用した日から開始されることになるため初年度だけは使用開始の日から事業年度末日までの月数案分となります。(1月16日に使用開始などのような日数の端数は1か月と計算されます)

上記のように定額法は初年度こそ月数案分の関係上金額が違いますが、2年目以降は毎年同額が減価償却費として計上されます。

②定率法

期首帳簿価額(期首未償却残高)に一定率の割合で減価償却費として計上する方法です。

<算式>「期首未償却残高×定率法の償却率」

<具体例>
3月決算法人で1月に1,000,000円で資産を購入 定率法5年償却率0.4
1年目・・・・・1,000,000円×0.4×3/12=100,000円  
2年目・・・・・(1,000,000円-100,000円)×0.4×12/12=360,000円
3年目・・・・・(1,000,000円-100,000円-360,000円)×0.4×12/12=216,000円

初年度の月数案分は定額法と同じです。上記のように定率法は初年度だけでなく毎年の減価償却費は同額ではありません。

法定償却方法

減価償却の償却方法は特に選定しなければ次の通りとなります。

建物、建物付属設備、構築物・・・定額法
上記以外の有形固定資産・・・・・定率法(定額法に変更可能)
無形固定資産(鉱業権を除く)・・・定額法
鉱業権・・・・・・・・・・・・・定額法(例外規定あり)
生物・・・・・・・・・・・・・・定額法

上記を法定償却方法といい建物、建物付属設備、構築物以外の有形減価償却資産は何もしなければ定率法ですが届出を提出すれば定額法に変更することもできます。

個人事業者の取扱い

減価償却について「法人」と「個人事業者」とで取扱いが異なる部分があります。「個人事業者」の方は是非参考にして下さい。

①法定償却方法

「法人」は建物、建物付属設備、構築物以外の有形固定資産は『定率法』が法定償却ですが「個人事業者」は『定額法』が法定償却方法です。

②償却は強制

減価償却の計上について「法人」はまだ稼働していないなどの理由から減価償却を計上しないことができますが、「個人事業者」はこのような規定はありませんので必ず減価償却費として計上しなければなりません。(強制償却)

会計事務所から一言コーナー

以前は建物、建物付属設備、構築物は定率法を選定することができたのですが、税法改正により「法人」も「個人事業者」も定額法のみとなりました。

当事務所では車両運搬具や機械装置などと違い建物などは「ゆっくり価値が下がる」であろうという解釈から税法改正前から既に定額法を進めていました。
おかげで今回の改正でも関与先は慌てることもなく業務を遂行していくことができました。

また「個人事業者」は強制償却となりますが、「法人」は法人税法上償却限度額が定められておりその限度額に達するまでならば任意償却することができます。

しかしながら任意償却は減価償却の計上が自由にできるともとらえられその結果最終利益が自由になるともとらえられるため融資の関係で印象を悪くしてしまう可能性があります。

減価償却はよほどの理由がない限り償却限度額まで計上した方が良いでしょう。