法人成りに伴う固定資産の譲渡に付いての質問

個人事業者で飲食店を経営しており、毎年確定申告を行い、また消費税も課税事業者なので毎年申告をしていましたが、この度個人事業を廃業して法人成りしようと思っています。

なお店舗にある設備や車両は、そのまま法人で引き続き使用したいと思っています。
この場合においての税金はどのようになりますか?

回答

法人成りしたことに伴い、その個人事業主が使用していた固定資産を法人に引き継いだ場合は、個人事業主と法人でそれぞれ下記のようになります。

個人事業主側

個人事業主側はその使用していた固定資産を法人へ「賃貸するか」「売却するか」によってそれぞれ取り扱いが異なります。

■ ①賃貸の場合
個人事業主が法人に設備や車両を賃貸した場合は、その受取った賃貸料について所得税が課税されます。

また その受取った賃貸料は消費税の課税対象になるため、判定を行った結果、その個人事業主が課税事業者に該当する場合は消費税が課税されます。

②売却の場合(こちらが一般的です)
個人事業主が法人に設備や車両を売却した場合は、その売却金額(時価)について所得税が課税されます。

また その売却金額(時価)は消費税の課税対象になるため、判定を行った結果、その個人事業主が課税事業者に該当する場合は消費税が課税されます。

法人側

①賃貸の場合
法人が個人事業主から設備や車両を賃貸した場合は、その支払った賃貸料については、当然のことながら必要経費(損金算入)になります。

また、その支払った賃貸料は消費税の課税対象(仕入税額控除)となり、判定を行った結果、その法人が課税事業者に該当する場合は消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。

ただし、その法人が免税事業者の適用を受けている場合は、そもそも納付すべき消費税額が発生しないので、仕入税額控除の適用も受けることはできません。

②売却の場合(こちらが一般的です)
法人が個人事業主から設備や車両を購入した場合は、その購入金額(時価)については固定資産となり、毎年減価償却費として計算した額が必要経費(損金算入)になります。

また、その購入金額(時価)は「①賃貸の場合」と同じく消費税の課税対象(仕入税額控除)となり、判定を行った結果、その法人が課税事業者に該当する場合は、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。

ただし、「①賃貸の場合」と同様にその法人が免税事業者の適用を受ける場合は、そもそも納付すべき消費税額が発生しないので、仕入税額控除の適用も受けることはできません。

結論

上記のことから法人設立に伴う設備や車両の引継ぎは、売却であっても、賃貸であっても、個人事業主側で所得税が課税され、法人では必要経費(損金算入)となります。

なお消費税については、以下のようになります。

①個人事業主側
個人事業者の時は課税事業者に該当していたとのことなので、売却の場合は売却金額(時価)で消費税が課税されます。

賃貸の場合は、たとえ個人事業を廃業した後であっても、賃貸料が課税対象なので、判定を行った結果、課税事業者に該当する期間は消費税が課税されます。そしてこの消費税の課税は課税事業者に該当しなくなる(免税事業者)まで続きます。

②法人側
法人側は、購入であっても、賃貸であっても、免税事業者の適用を受ける場合は、そもそも納付すべき消費税額が発生しないので、仕入税額控除の適用も受けることができません。

免税事業者は消費税そのものが対象外(免税)です。