法人の役員には会社法上の役員と呼ばれるものと法人税法上の役員(みなし役員)と呼ばれるものがあります。
会社役員についてのお話は大変深くまた非常に分かりづらい為、中小法人に限定した上であまり掘り下げすぎずに簡素化してお話ししようと思います。
会社法上の役員とは
法人登記している取締役(代表取締役を含む)、監査役及び会計参与をいいます。
自身の会社の役員を知るには、法人化した時に法人登記手続きをした管轄の法務局で履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を取得すれば記載されています。(わざわざ履歴事項全部証明書を取得しなくても、会社自身で役員を選任しているので覚えている会社がほとんどでしょう)
法人税法上の役員とは
1.形式的な役員
上記会社法上の役員はもちろんのことそれ以外に法人の執行役、理事、監事及び清算人をいいます。
これらの者は法人自身が選任したいわゆる形式的な役員ですので、職務の実質内容も問うこともなく純然たる役員となります。
2.みなし役員
会社法上の役員及び法人税法上の形式的な役員以外の者で法人の経営に従事しているもののうち政令で定める者(法人税法施行令第7条)をいいます。
以下みなし役員について述べていきます。
みなし役員とは
このみなし役員が法人税法上において独特に定められたもので、大変複雑になります。
まずみなし役員とは先程も述べたように会社法上の役員及び法人税法上の形式的な役員以外の者で法人の経営に従事しているもののうち政令で定める者(法人税法施行令第7条)をいいます。
この「会社法上の役員及び法人税法上の形式的な役員以外の者」とは誰かというと・・次の①又は②に当たる者をいいます。
①法人の使用人(職制上使用人として地位のみを有する者に限ります)以外の者でその法人の経営に従事している者
これは平たく言えば取締役等を退任しているがまだ相談役や顧問等(会長職も含みます)としてその職務等からみて法人の経営に従事していると認められる者等をいいます。
②同族会社の使用人(職制上使用人として地位のみを有する者に限ります)で次のイ~ハに掲げる要件の全てを満たしている者でその同族会社の経営に従事している者
この②が大変複雑です。まず同族会社とは? 簡単に説明しますね。
同族会社とは会社の株主等の3人以下及びこれらの同族関係者の有する株式数がその会社の発行済株式の総数の50%超を所有し議決権の50%超を有している会社をいいます。
上記を踏まえた上で次のイ~ハに掲げる要件を記載します。
イ:その会社の株主グループをその所有割合の大きいものから順に並べその使用人が所有
割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、又は第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計した時に50%を超える株主グループに属しているか、若しく は第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した時に50%を超える株主グループに属していること。
ロ:その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
ハ:その使用人(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること。
(注)「株主グループ」とはその会社の株主等及びその株主等と特殊な関係にある個人及び法人をいいます。(親族等が代表例です)
長々と複雑なことを書きましたが、究極な話をしますと・・「ハ」の要件に当てはまるかどうか?に注目して下さい。
これに当てはまって会社の経営に従事している使用人は「みなし役員」になります。
最後に
複雑な役員の定義をできるだけ簡素化して記載しましたが、それでもややこしいですね。
そんなややこしくても敢えて記載したのは、実は会社(特に同族会社)と役員との取引にはいろいろな規制があるからなのです。それをまたの機会にお話ししていきます。
<会計事務所から一言コーナー>
役員の定義の中ではみなし役員の定義がもっとも複雑になり、これを説明するには同族会社からの話を避けて通るわけにはいかないため、簡素化して説明しました。
日本は同族会社大国といわれるほど同族会社が多く、その割合は実に会社全体の95%を超えています。以前は会社を設立するのに7人の発起人が必要でしたが、現在は一人で会社の株主になることができ、また役員も一人という会社が増えています。
いわゆる一人で全てを決めることができるようになりました。このように少人数で会社の決定ができる同族会社(一人会社も含みます)において、法人税法では会社と役員間での取引や同族会社の行為について制限を加えています。
全てを網羅する必要はありませんが「ハ」の要件だけは知っておいたほうがいいでしょう。