親族に対する給与の支払いについて質問
親族に対する給与の支払いについて質問です。現在、個人事業者で小売業を営んでおり、開業当初から申告は青色申告にて申告しています。
数名の従業員がいますが、今回から配偶者と長男にも従事してもらおうと思っています。配偶者とは同居していますが、長男とは別居しています。
将来は法人成りを考えていますが、配偶者と長男に対して支払う給与は、個人事業者の場合と法人の場合では何か違いがありますか?
回答
個人事業者と法人とでは、次のように取扱いが異なりますので、分けて回答いたします。
(1)個人事業者である場合
個人事業者である場合は、所得税法の規定に従って取扱うことになります。
そして、青色申告者である個人事業者が親族に対して支払う給与については、その個人事業者と「生計」を一つにしている(注)かどうかで取扱いが異なります。
生計を一つにしている:青色事業専従者給与の届出が必要です。
生計を一つにしていない:従業員と同様になるため届出は必要ありません。
(注)生計を一つにしているとは、所得税法を要約すると日常の生活の資を共に(同居)していることをいいます。
上記以外でも、例えば会社員が転勤等により家族と別居している、又は親族が修学等のため別居している場合でも「生活費」等を常に送金している時は「生計を一にする」ものとして取扱われます。
以上のことから、ご質問の配偶者と長男に対して支払う給与について、配偶者はその個人事業者と生計を一つにしているため青色事業専従者に該当し、その給与の支払に対しては青色事業専従者給与の届出が必要です。
長男は、その個人事業者と生計を一つにしていないため青色事業専従者には該当せず、その給与の支払に対しては従業員と同様に取扱って差し支えありません。
なお、青色事業専従者における注意点を補足しておきます。
■注意点1
青色事業専従者に該当する配偶者は、専らその個人事業者の事業に従事しなければならず、他で働く(2か所から給与の支払いを受ける)ことができません。
■注意点2
青色事業専従者に支払う給与の額は、青色事業専従者給与の届出書に記載した金額までが限度になり、その限度額を超えて支払う場合は青色事業専従者給与の変更届が必要です。
■注意点3
青色事業専従者はその個人事業者の所得税の控除となるべき控除対象配偶者や扶養親族になることができません。(重複適用不可)
(2)法人の場合
法人になりますと法人税法の規定に従って取扱うことになります。そして法人の場合は、個人事業者のような「生計を一にする」などの規定はなく、親族に対する給与であっても従業員と同様に取扱って差し支えありません。
また、同居している配偶者も青色事業専従者のような縛りはなく、届出も必要なければ他で働いて2か所から給与の支払も受けることができ、また要件を満たせばその代表者の控除対象配偶者や扶養親族になることもできます。(重複適用可)
以上のことから、ご質問の配偶者と長男に対して支払う給与については、他の従業員と同様に取り扱うことができます。
なお法人の場合の注意点を補足しておきます。
■注意点1
その配偶者と長男がその法人の役員(みなし役員を含みます)に該当する場合には、その給与の支払に対しては「定期同額給与」にしなければなりません。
■注意点2
その配偶者と長男がその法人の役員(みなし役員を含みます)に該当する場合には、その賞与に支払に対しては損金(必要経費)にすることはできません。